【境界カメラ10】ドキュメント・寺内康太郎『アイズ』酩酊事件(後編)

映画版心霊調査ビッグサマー上映会



ニコニコ動画『モノガタリ』と『ビッグサマー』両チャンネルの配信中に起きた、寺内康太郎『アイズ』酩酊事件。

ひとりの『境界カメラ』リスナーにすぎないオレが送った一通のTwitterのダイレクトメール。
そのメールに返答が来たのは、翌日のことだった。

ニコニコ動画『境界カメラ』チャンネルはこちら!

当たり障りのないメールゆえに、返答されるメールも当たり障りのないそれ、だと思っていた。
たしかに一通目は「ありがとうございます」みたいな、そんな普通のメールだった。
しかし、それだけでは終わらなかった。
二通目、三通目と続けてやりとりが続いた。

私信になるので、メールの直接的な内容は公開はしないが、何通目かのメールの要旨は「昨日の内容はあんまり覚えていない。どんなことを行ったのか、教えてもらいたい」だった。

前回の記事にあった『アイズ』関連放送において、寺内が登場してから配信が終了するまでの一部始終を書き記したメモ。
あれは、寺内が行ったことを寺内自身に伝えるために書いたものであった。

もちろん、配信を見ているときは、単なる視聴者であるオレが画面の向こうにいた寺内に対し「これこれこんなことをやってましたよ」なんて伝える役を任せられるとは思わなかった。
寺内の言動に最後までハラハラしながら見ていたものの、詳細まではっきりと覚えているわけじゃない。

その日、「まとめますから少々お時間ください」と寺内にDMを返信したオレは、仕事が終わり夜10時頃に家に帰ってから、再度『モノガタリ』『ビッグサマー』の両チャンネルと『ビッグサマー』のコミュニティ放送を見直しして、前回のあれをまとめた。
寺内にあのメモ書きを送ったのは午前2時頃だったか。

深夜だというのに、寺内はすぐにお礼のメールを返信してきた。
そこからだ。
DMのやりとりを密にしはじめたのは。
どれもこれも長文のやりとりであった。
ときには1回のメールで400字詰め原稿用紙15枚以上に及ぶこともあった。

このメールの中で、オレはオレなりに思っていたこと。
特にナリモトD失踪事件について、寺内に聞いてみたし、オレなりの思いを送った。

寺内は「ナリモトD失踪事件」がずっと止まったままでいるこの状況に心を痛めていた。
何よりも楽しみにしているリスナーに申し訳ない、と思っていたのだ。

酒の上での失言、暴言について。
あの『アイズ』裏実況のときの寺内は、たしかに大人気なかったのは事実だ。
画面に映る寺内の姿は、普段、視聴者が目にするような、情報を的確に分析するクレバーな寺内ではなく、新宿西口のしょんべん横丁あたりでクダを巻いている酔っ払いそのものだった。

それにしても、どうして沈着冷静そのものの寺内が酒に飲まれてしまったのか。

自分の気の合う仲間が集まった。
楽しい。
酒が進む。
開放的になる。
さらに酒が進む。
普段心の中に仕舞い込んでいたものが、思わず口に出てしまう。

よくある話だが、今回の取り乱し方は度が過ぎていた。
あれだけ乱れてしまったのは、なんらかの理由があるはずだ。
オレはそう考えた。

これには三つの大きな要因があった、という結論に至った。
「この酒の場」「この時期」「配信された」からだと思われる。
「酒は怖い」で終わる単純な話ではないのだ。

まず「この酒の場」

仲間が集まった。
それも久々にあった人もいたのであろう。
気の置けない仲間と飲む酒の場は、とにかく楽しいのだ。
杯を重ねるのも無理はない。
タガが外れるほど盛り上がってしまった。

次に「この時期」

『境界カメラ』における自身の新企画「テラコーの妄想推理ドキュメント」は2018年6月8日配信分で終了し、その後はニコニコ生放送「夏のホラー百物語」開催にあわせて、他のコンテンツとの対決シリーズを展開した。

結局は場つなぎ的な企画にすぎず、寺内は本筋である「ナリモトD失踪事件」が一向に進まないことに非常に悩んでいた時期だった。

最後に「配信された」
これが一番大きい理由である。
もしも今回、仲間内の閉ざされた飲み会であれば、たとえ不平不満があったとしても寺内のことだ。
自制心が働いたことだと思う。
しかし今回は仲間と一緒に飲んだところが配信されたのだ。
確かに映画『アイズ』の裏実況の場かもしれないが、見ている人たちの中にはオレを含め『境界カメラ』のリスナーもいた。
『境界カメラ』のなかでの自分の不安定な立ち位置や、なにより「ナリモトD失踪事件」が一時中断されてからまもなく一年が経とうとしている。
そして画面の先には、「ナリモトD失踪事件」の再開を待ち望んでいるリスナーたちがいる。

どうなったんだ……?
これからどうなるんだ……?
まさか寺内さん、「ナリモトD失踪事件」のこと忘れてしまったの……?

そんなリスナーの疑問を実感したのだろうか、酒の力もあってか、寺内が抱く様々な思いが一気に爆発したのだ。

「この酒の場」「この時期」「配信された」から。
それがオレの考える、寺内康太郎『アイズ』酩酊事件が起きた理由である。

寺内はオレとのメールを重ねることで、オレだけの言葉というよりもその裏にある『境界カメラ』リスナー全員の思いを感じ取ってくれた。
チャンネル開始当初からの『境界カメラ』の会員で「ナリモトD失踪事件」の再開やその解決を望まない人などいるわけがない。

「ナリモトD失踪事件」は、ニコ生ホラーだけではなく、日本のホラー界においても、いや、エンターテイメント業界のなかでも、如何にとてつもないコンテンツだ、とか。
ニコニコチャンネルを使うことで、単に情報を発するだけではなく、リスナーも見るだけなく、一緒に謎を追うことができる本当の意味での双方向型エンターテイメントである、とか。

オレが、リスナーが思っているだろうことを次々に寺内にぶつけた。
それに対して、寺内も応えてくれた。

その過程の中で、寺内はひとつの決断をする。

2018年10月6日。

寺内の盟友である夏目大一朗の自主映画『映画版心霊調査ビッグサマー』上映会が原宿カプセルにて行われた。

補助席を合わせても40席にも満たない小さな箱に溢れんばかりの人が集まり、10月に入ったのに汗ばむほどの熱気であった。

盛況のまま上映会は終了し、監督や出演者、映画には出てないけどビッグサマー関連作品に登場したキャスト、それに夏目とは直接の関係はないのにその後関係者になった女優など、総勢15人前後が登壇した舞台挨拶。

舞台には映画に出演した寺内の姿もあった。

寺内は『アイズ』配信以降これまで発言しなかったことを詫び、こう続けた。

「有馬プロデューサーと今後の『境界カメラ』について話をつけにいきます。それを生放送します」

上映会翌日、その言葉どおり、寺内と有馬は新宿にあるエル・エーの事務所にて対峙することになる。

そして、それぞれの胸中に秘めた思いをぶつけることになるのだ。



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