【境界カメラ11】寺内康太郎と夏目大一朗の関係性

寺内康太郎と夏目大一朗と西川千尋



2018年10月7日。
寺内康太郎は、新宿にある株式会社エル・エーの事務所に向かっていた。
『境界カメラ』の今後について、そして「ナリモトD失踪事件」の再開について、プロデューサー有馬顕と話をするために。

ニコニコ動画『境界カメラ』チャンネルはこちら!

その日の寺内は、先日の酒に呑まれた男とは打って変わり、やる気と決意に満ち満ちた男の顔をしていた。
そうだ、寺内は変わったのだ。
寺内のなかで変わった点は顔つきだけではない。

たとえば撮影方法である。
カメラでの撮影ではなく、手持ちのスマートフォンでの自撮りに変わった。
これまでの寺内は、カメラで撮ったVTRを時間をかけて編集し、スタジオで放送するという流れで配信を行っていた。
テレビ番組のように、きちんとしたVTRをスタジオで視聴者に届けなければいけない。
映画監督である寺内はそう考えていたのかもしれない。

ただVTRを編集するには、手間暇がかかる。
スタッフも必要になるし、だいいち視聴者に情報を届けるのに時間差が生じるのだ。

自分のスマートフォンで撮影した、生の素材をそのまま配信する。
ダイレクトに視聴者に伝えることはできるかもしれないけど……。
でも、それでいいのか……?
画質はどうだ?
音はどうだ?
料理と同じで、素材を時間をかけて編集するからこそ、面白い作品になるのではないか……?

映像作家として、そんな葛藤もあっただろうが、寺内は新たな撮影方法に果敢に挑戦したのだ。
幸いなことに寺内にはお手本となる先駆者がいた。
その先達こそ、映画監督の夏目大一朗である。

夏目大一朗と西川千尋

夏目大一朗と西川千尋

夏目は自身のニコニコ動画『ビッグサマー』チャンネルにて、これまで週一ペースで配信していた生放送であったが、2018年の夏頃から毎日行うスタイルに変えた。
夏目自身、YouTubeでの最初期は、ゲストを招きトークするという、テレビ番組みたいな構成で配信していたが、紆余曲折あり今のスタイルに落ち着いたという経緯がある。

時には自宅近くのスーパーや公園、自宅の風呂場などで、バイクで轢いてしまい、画面がバキバキになったiPhoneで自由気ままに好き勝手に配信を行う。
そんな夏目の様子を「ビッグサマー公式プロデューサー」の称号を与えられた寺内は、単純に楽しいなと思ったのだろう。
同業であり盟友でもある夏目は、寺内に大きな影響を与えた。
以前の記事で、寺内は夏目を助けた、と寺内が夏目にとっての救い主であるかのように書いた。

【夏目大一朗4】走り出してから考え、継続する男、夏目大一朗

実際、夏目は的確なアドバイスをくれる寺内に対し、感謝してもしきれないほどの思いを抱いている。
大袈裟ではなく救世主(メシア)的な存在だ、と思っているだろう。
だから事あるごとにまるで兄のように寺内に頼り、寺内を慕っている。

寺内と夏目は、出逢った当初こそ夏目が寺内に頼る一方的な関係であったが、その関係は徐々に夏目が寺内を信頼し、寺内もまた夏目を信頼する、双方が与え合う関係に変化していったのだ。

寺内はこれまでと同様に映像作家として映像で視聴者に伝える手法を維持するとともに夏目がニコニコ生放送で取り入れている、いわゆるニコ生主みたいな配信スタイルを踏襲した。
これ以降、ニコ生が大好きな寺内にとってベストともいえる、ハイブリッドな撮影方法を確立することになる。

寺内にはもうひとつ変化があった。
今まで自分の胸だけに留めていた思いを外に出そうとする、気持ちの変化だ。
「ナリモトD失踪事件」を打ち切り終了にしてはいけない。
その思いはディレクターである寺内もプロデューサーの有馬もお互いに変わりはなかったはずだ。
しかし寺内は具体的にいつ再開するのか、有馬に聞けずにいた。
有馬も有馬で『境界カメラ』を維持することでナリモトD失踪事件までは手が回らなかったのだろう。
寺内も有馬も、互いにコミュニケーションが不足していた。
そのような状況に、寺内は仕方がないとか、あるいは諦めの境地に至っていた。

だがもう寺内は諦めることをやめた。
諦めてはいけない、と思ったのだ。
寺内にはナリモトD失踪事件を未だに待っている会員の存在をリアルに知ったから。
別にこれは寺内が映画『アイズ』の裏実況が終わったあと、オレがメールしたからなんて、そんな小さなことではない。

もっと大きな存在。
もっと多くの存在。
オレだけじゃない、『境界カメラ』のリスナー、寺内康太郎の作品が、寺内康太郎の人となりが好きな人たちの存在を寺内自身がリアルに感じたから。

寺内はひとりじゃない。
みんな一緒にいるんだ。
同じ方向を向いている、みんながいる。

そして、『境界カメラ』リスナー全員に背中を押された寺内は、エル・エーの事務所の扉を開けたのだ。



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