【境界カメラ12】寺内康太郎と有馬顕、そして「ナリモトD失踪事件」の行く末は?

寺内康太郎と有馬顕



2018年10月7日。
日曜日の昼下がり、『境界カメラ』運営会社である株式会社エル・エーの事務所で寺内を待っていったのは、プロデューサーの有馬顕だった。

現場責任者であるディレクター寺内康太郎とカネを管理するプロデューサー有馬顕。
『境界カメラ』のツートップがまさに相まみえる瞬間がやってきた。

すべての『境界カメラ』会員であるリスナーの思いを肩に背負い、ナリモトD失踪事件再開に向けて、有馬に語りはじめる寺内。
クールな語り口ではあるが、その言葉のひとつひとつが熱を帯びていた。

寺内のなかで静かに燃えたぎる熱量の高さ。
有馬との話し合い前日に行われていた『映画版心霊調査ビッグサマー』上映会の後、オレは寺内が内に秘めていたその熱を間近に感じていた。

上映会開催の数日前の話だ。
映画『アイズ』裏実況の例の事件以降、DMのやりとりをしていた寺内から「ビッグサマーの上映会の後、ごろーさんのインタビューをしたい」と言われた。
元々上映会に行く予定だったオレは「ええ、自分でよければ是非」と二つ返事で答えた。

寺内は映像作家であるがゆえに、映像言語で視聴者に語りかける。
その作家からインタビューと言われたのだ。
当然、その様子をカメラで映されることは最初からわかってた。

オレみたいな単なるおっさんを映しても楽しい絵面じゃないし、演劇に携わっているわけでもない、一般社会人に過ぎない自分がまともにしゃべれるのか、画面に映ってもいいのか、と思わないでもなかったが、すでにインタビューにオーケー出しているのだ。
よく考えたら顔出しとかアレなんで……などと心変わりしたことを伝えても、寺内の熱に思い切り冷や水を差すことになる。
だいいち、寺内とDMのやりとりを続けることで、もうすでにオレは拳を挙げているのだ。
「モザイクかけてください」なんて、高く掲げた拳を中途半端に引っ込めるのも格好が悪い。

それに、だ。
顔出しがどうこうなんてオレの個人的な理由以上に『境界カメラ』の一会員である自分が、寺内に「ナリモトD失踪事件」について直接伝えられることのメリットが大きいのは間違いない。

オレはどうしても伝えたかった。

「ナリモトD失踪事件」は、寺内康太郎が自分で捉えている以上にとてつもないほど優れたコンテンツだ。
ニコ生ホラーの範疇を超えた稀代のエンターテイメントをこのまま腐らせるのはもったいない、映像業界における大損失だ、と。

インタビューを受けるということは、逆を返せば、寺内に対して、思っていることをなんのフィルターを通すことなく、ダイレクトに伝えられるチャンスを得たのだ。
絶好の機会を逃してはいけない──オレは、そう考えたのだ。

そもそも『監死カメラ』シリーズに登場する人たちは顔出しが基本だ。
その系譜にある『境界カメラ』も余程のことがない限り、同様だろう。

実際に寺内から取材をされた後、「ごろーさん、顔隠しましょうか」と訊かれることはなかったし、オレ自身も「モザイク入れて顔を隠して下さい」と言わなかった。
自分が出ることによって、「ナリモトD失踪事件」がリアルなドキュメンタリーとして成立するための、ちょっとしたアクセントにでもなれば、やった甲斐があったというものだ。

もちろん、オレがすべての『境界カメラ』会員の代表だとは端から思っていない。
「自分の考えこそ、みんなが従うべき考えである」なんてことを主張できるほどの自信家でもないし、リーダーシップを発揮するタイプでもない。

ただそれでも、ひとつだけ確信していた。

「ナリモトD失踪事件」を再開してもらいたいという思いだけは『境界カメラ』会員みんなに共通していて……。
そのナリモトや謎に満ちた事件を追いかけるリーダーは、他の誰でもない、寺内康太郎なんだ、と思っていることだ。

寺内ももちろん、わかっている。
だからこそ、寺内の心にくすぶっていた火種は『境界カメラ』会員の思いが伝わり、大きな炎にかたちとして表れた。

その日の生配信で有馬と対峙する寺内の姿を、外出先からiPhoneで観ていてそう思った。

有馬は寺内の熱を感じながらも、勤めて冷静に受け答えをする。
経営者として話題に出したのは、具体的な会員数やそこから得られる会費など、リアルなカネの話だ。

寺内のリスナーに対する情と、有馬の現実的な理。

情と理がぶつかり合う。
リタルタイムでふたりの様子を伺うリスナーたち。

寺内の解決策は情だけではなく、有馬の理にも叶う提案を出した。

「年内に有馬プロデューサーの前にナリモトを連れてきます。もしナリモトを連れてこられなければ、すべての経費をお返しします」

寺内の提案に「わかりました」と有馬はうなづいた。
そして、寺内と有馬は固い握手をする。

その日の寺内のTwitterのツイートがこれだ。

嬉しいのは寺内だけじゃない。
大袈裟な話ではなく、『境界カメラ』会員であるリスナー全員が喜んだ。
寺内と有馬が握手をしたときに、どれだけの人が胸を熱くしただろうか。

オレは、あのときに抱いた、熱い気持ちを忘れない。

かくして2017年10月後半に中断された「ナリモトD失踪事件」は、一年近く経った2018年10月7日にようやく復活の狼煙を上げたのだ。



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