【境界カメラ7】寺内康太郎と有馬顕が抱く『境界カメラ』への思い

寺内と有馬とうどん



『境界カメラ』は、カネがないという、単純かつ最大の問題に直面していた。

2017年10月21日配信「【境界カメラ#12「ナリモトD失踪事件報告会」第4弾!遂にナリモトが消えた廃墟へ潜入!アシスタントは期待の新人『ふゆふきうどん』登場!】」

ふゆふきうどん

ふゆふきうどん

その配信は、ナリモトD失踪事件を追う回であったが、その日の寺内康太郎の顔にはどこか落ちつきがないように見えた。

寺内康太郎

寺内康太郎

アシスタントしてスタジオにも登場したアーティストふゆふきうどんの唄が終わり、ひとしきりスタジオトークをした寺内がこう続ける。

「来月からちょっとリニューアルするということで、有馬プロデューサーからアナウンスさせていただきたいです

有馬顕プロデューサー

有馬顕

寺内の言葉を受け、『境界カメラ』プロデューサーであり、株式会社エル・エー代表取締役の有馬顕は、いつもと変わらずに飄々と語った。

「境界カメラは予算の捻出に苦しんでおります。やりたい調査を続けるのが難しい状態なんです。なんとか続けていきたいというなかで作戦を考えているんですね。少し様子が変わると考えてもらって。この味は続けていくんですが、曜日とかをちょっと変えたりとか。随時アナウンスしていきます」

図らずもお金の問題を目の当たりにした『境界カメラ』会員たち。
会員のなかには、自分たちに出来ることはないか、とクラウドファンディングやグッズ販売による直接的な意見をコメントする人たちもいた。
その会員たちの言葉には、嘘偽りはなく、心からの叫びにも似た声だったと思う。

そういったリスナーの声を受けるように、2017年11月3日配信「緊急会議!「境界カメラ」のこれからをみんなで語ろう」では、寺内自らプレゼンテーション資料を作成し、『境界カメラ』の各コーナーのコストについて非常に細かく語った。
コストだけでない、今後、『境界カメラ』がどのような方向を目指せばいいのか。
寺内はその方向性まで示したのだ。

コーナー予算表

コーナー別経費表

企画それぞれの予算という通常明かさないような赤裸々な内情の暴露。
当時、チャンネル放送を見ていた会員たちに驚きと衝撃が走った。
ここまで打ち明けるのか、と。
こんなにカネがかかっていたら、ひとり頭月額500円と消費税の会費だけでは足りないだろう、と。

現状のコンテンツを製作する経費に対して、チャンネル会員の会費収入だけでは赤字になる。

この現実に直面した『境界カメラ』プロデューサーであり、運営会社である株式会社エル・エーの代表者の有馬はこう決断した。

まずはチャンネルを立て直すことに注力しよう、と。

有馬は、決して寺内を蔑ろにしようとは考えていなかった。
事実、有馬は『境界カメラ』の即時打ち切りを宣言したわけではない。
会員から得られる会費でまかなうことのできる身の丈にあった企画に変更し、いつの日にか本筋である「ナリモトD失踪事件」を追おうと考えていた。

そうなのだ。
有馬は有馬で「ナリモトD失踪事件」を継続させたい思いはあった。

もしも有馬が単なる冷徹な、言ってしまえばそこらへんに転がっているような経営者であれば、この時点でチャンネル自体を打ち切る可能性が高かったと思われる。
そもそも採算が合わないのだ。
非営利団体ではなく営利企業なのだから、儲けが出なかったらそれをやめて他のことに全力を注ぐのは当然の帰結だ。

しかし有馬はそうしなかった。
メタな発言になってしまうかもしれないが「ナリモトD失踪事件」という寺内渾身の一作は、元々映像畑出身の有馬にとっても、非常に挑戦的で魅力的なコンテンツだと思ったのだろう。
有馬は寺内の才能に大きな可能性を見出していたのだ。

この時点では、ナリモトがカネを持ち逃げして失踪している流れもあったが、それを脇に置いておいたとしても、有馬もまた会員と同様、その後の事件がどうなるのか、その展開を気にしているひとりだったといえよう。

その一方で寺内はどう思っていたのか。

理由はどうあれ、ナリモトD失踪事件、KKK企画は凍結された。
事実上の打ち切りを突きつけられた。

要するに「運営側から『境界カメラ』総監督をクビにされた」と寺内は受け取ったのだ。
その日以降、寺内が「ゲストに昇格した」といった旨の発言をしたのは、つまりは『境界カメラ』総監督を降りた(降ろされた)、という意味に他ならない。

もしも寺内が異常に高いプライドを持った意固地な性格の男であったら、この段階で沸き上がる憤りを抑えることができず、もう二度と『境界カメラ』の画面に出なかったかもしれない。

しかし寺内はそんな了見の狭い男ではなかった。
寺内は、ゲストという一歩引いた立場ではあったが、『境界カメラ』の立て直しに対して実に建設的な提案をしていたし、オファーがあれば『境界カメラ』に出演した。
それは、元々、大きな期待をもって寺内康太郎を『境界カメラ』に招聘したプロデューサー有馬に対して、そしてそれ以上に開始以来応援し続けてくれた、すべての『境界カメラ』会員に対して、最大限の配慮をした結果だと考える。

『境界カメラ』プロデューサーであり、運営会社代表である有馬顕。
『境界カメラ』の総監督で、現場責任者だった寺内康太郎。

ふたりとも人間なのだ。
『境界カメラ』に対して持ち合わせている思いすべてが合致しているわけがない。
そんなのは有馬と寺内だけでなく、誰と誰であってもそうだ。
それでも「ナリモトD失踪事件」を続行させたいというふたりの思いだけは、同じベクトルを向いていた。

ただ同じ方向を向いていたとしても、温度差はあった。
たとえば優先順位の違いがそれだ。

有馬の場合、「ナリモトD失踪事件」を追いたいことは追いたい。
だが、その前にカネはどうするか、という経営者としての目線が出てくる。
営利企業である以上、継続的な儲けがないと行うことができない。

採算度外視で本当にやっていいのだろうか?
それで会社の経営はどうなるのだ?
自分や社員、それだけじゃない、自分の家族、社員の家族はどうなるんだ?

有馬はそう考えた。

仮に『境界カメラ』ひとつを採算を無視して行ったとしても、会社の経営が傾くことはないだろう。
しかし、すべてのプロジェクトを採算に見合わないまま続けていけるわけがない。
どんな案件に対しても、最善手を考えるのが経営者として最大の仕事だといえよう。

では、寺内の場合はどうか。

寺内は運営会社であるエル・エーに所属しているわけじゃない。
カネも大事かもしれないが、それ以上になんとしてでも事件を追うことを優先させたい。
それが『境界カメラ』を応援してくれている会員に対しての礼儀だ。

事件の追及とカネの問題。
その優先順位をどうするのか?

寺内も有馬も、それぞれの立ち位置から考えてみれば、どちらの考えも間違っていない。
どちらも正しいのだ。

だけれども、ふたりの間では、十分なコミュニケーションが取られていなかったのであろう。
残念なことにこの時点では、お互いの立場に沿ったお互いの考えをすり合わせ、「ナリモトD失踪事件」のその後の方向性を見出すことはできなかった。
「ナリモトD失踪事件」が休止になった当時、ツートップである寺内と有馬がもっと腹を割って話していれば、もしかしたら別の展開があったのかもしれないのに……。

「ナリモトD失踪事件」を追いかけたい気持ちは同じなのに、寺内と有馬との間に生じた心の歪み。

まさに波乱の種を飲み込みながら、『境界カメラ』チャンネルは新章を迎えることになる。

ニコニコ動画『境界カメラ』チャンネルはこちら!



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