【夏目大一朗4】 走り出してから考え、継続する男、夏目大一朗

『境界カメラ』寺内康太郎&夏目大一朗



夏目大一朗が今一番力をいれているコンテンツが『心霊調査ビッグサマー』だ。

これは夏目監督作『呪ギャル〜芸能怨霊伝説〜』でコンビを組んだ西川千尋やお笑い芸人シークエンスはやともと共に夏目が様々なシチュエーションで悪霊と対峙する作品──といえば聞こえがいいが、基本的には何かが見えた、逃げた、で終わる短編ホラーコメディである。

製作著作はビッグサマー合同会社。
法人といっても夏目の個人会社であり、実質的に夏目の自主映画だ。

ちなみに会社名でもある「ビッグサマー」とは、夏目大一朗の名前から、夏と大を取り出した「大夏」を英語読みしたものであり、会社立ち上げ当初、夏目が取引先に自分の社名を伝えたるたびに失笑みたいな対応をされたそうだ。
なお夏目大一朗は、夏目大一郎や夏目太一朗などと間違われやすいが、朗が郎くらいならまだしも、大が太になってしまうと「太夏」で「ファットサマー」になってしまうため、注意が必要だ。

夏目は当初、『ビッグサマーch』という番組を企画して、YouTubeで配信していた。

この配信は夏目が監督をした作品の販促を目的としたもので、夏目の弟子筋にあたる福谷孝宏をアシスタントとし、映画の出演女優をゲストに呼んで三人でトークをするというバラエティ番組であった。
あくまでも普通の番組であり、夏目も司会を意識したちょっと気取った喋りをしているがあくまでも普通。
上から下まで、どこにでもある普通な番組だった。
再生数の伸びは、そのゲストである出演女優の人気に依存したものであり、夏目自身による集客はほぼなかったものと想定される。

おそらく夏目本人も他と代わり映えのしない自分の番組に対して、危機感を持ったのだろう。
夏目は『ビッグサマーch』をリニューアルし、YouTubeで前述した『心霊調査ビッグサマー』を公開するようになった。
2017年9月4日のことである。

また従前の『ビッグサマーch』のテイストも完全になくしたわけではなく、『心霊調査ビッグサマー』出演陣を呼び、ニコニコ生放送で雑談配信を行うかたちにした。

 

『心霊調査ビッグサマー』タイトル画像

どちらも週一ほどのペースで行われた。
コメディ色は強いがホラーに特化した作品を作り続けることで、夏目はホラー作品の視聴者を呼ぶ込む作戦にシフトしたのだ。

YouTube版『心霊調査ビッグサマー』は一話5分程度の短編であるが、リニューアルしても、まったくと言っていいほど再生回数は伸びなかった。
おそらく通常の精神状態であったら、10話程度の動画アップで見切りをつけ、放置するところだろう。

だが、夏目は違った。
人が見ようが見てまいがそんなのお構いなしに、継続し続けたのである。
これこそ夏目大一朗の鈍感力の優れたところであり、勝負師としての勘がそうさせたのかもしれない。
継続は力なりを地で体現している夏目の作品を見るために、これまでまったくいなかった夏目のファンが僅かではあるが徐々に増えていったのである。
ただ夏目自身は走ってから考える、ノープランの人間であるため、闇雲に迷走している状況に陥っていた。
その方向性を質すため、奮起したのが他ならぬ夏目のファンである。

とある夏目のファンは、2018年正月にとある映画監督にメールを送った。
内容は「夏目大一朗という売れない映画監督がいるが、その男に力を貸してくれないか」といったようなものだった。
その夏目ファンが直訴状みたいなメールを送った映画監督こそ、寺内康太郎だった。
寺内は、夏目よりも一学年年上で、商業作品におけるキャリアも経験も上の映画監督である。

寺内康太郎Wikipedia

夏目が寺内に直接メールを送ったのならまだしも、夏目の一ファンが人見知りの売れない映画監督の代わりに気持ちを代弁するという内容である。
普通ならば無視されるか、よくても社交辞令のメールが返ってくるだけが関の山といったところであるが、寺内は違った。
寺内康太郎は、親身になって見ず知らずの売れない映画監督、夏目大一朗に救いの手を差し伸べたのだ。

寺内と出会ったことで『心霊調査ビッグサマー』の世界観が劇的に広がることになる。
寺内の助力を得ることによって、夏目のホラー映画界における人脈も広がり、将来のビジョンもおぼろげながら見えてきた。
また実際に寺内康太郎は、寺内康太郎役として劇中にも登場した。

夏目は、ビッグサマーの導き手として、ビッグサマー公式Pの称号を寺内に半ば押し付けたが、夏目にとってはそれは最大の信頼の証であることは間違いない。

そして、YouTube版『心霊調査ビッグサマー』の更新を重ね続けた夏目にとってターニングポイントとなったのは、自主映画である『映画版心霊調査ビッグサマー』のニコニコ生放送での公式配信だった。



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